ライナーノーツ

・マチ

この曲の原型は、大分県の百貨店「トキハ」の超大型複合店「トキハわさだタウン」のCMソングとして書き下ろしたものです。「人々が行き交い、温かな心の触れ合うマチ」をテーマに、サビのフレーズだけを先行してつくり、CMのテーマに沿って福井としては珍しい「切なさを感じさせない温かな世界感」の15秒と30秒のバージョンを制作しました。
ちなみにこのテレビCMの主役は、当スタジオ所属の福井の後輩アーティスト「KANA」が務めており、福井も主役の友人役で出演しています。(現在も大分県の民放各局で夕方に放映されています)
このCMソングを福井も私達も気に入っていて、「これを活かして一曲の作品にしよう」ということになりました。しかし、一般的なCMタイアップ曲のように、「CMに使われているサビの一部だけが耳に付くけれど、他の部分はあまり印象にない」といった曲にしては、聴いてくださる方々に申し訳ないと、福井もやる気満々で、いつもの作品制作に増して何日も試作とダメ出し、打合せを繰返して、懐かしさと温かさを感じる作品が完成しました。

アレンジは、友人でもありCMバージョンでも参加してくれたベテランのギタリスト、並木健司さんにお願いしました。アコースティックギターとエレキギターを柱として織り成す、70年代のニューミュージックをイメージさせるサウンドには、年配の方からは懐かしさを、福井と同世代の皆さんにはちょっと新しい発見を感じていただけるかもしれません。
実はこの曲。歌録りにはかつてないほど苦労をしました。数ヶ月前にCMバージョンを創り、歌ったときの感覚が残っていて、一曲の作品としての歌の質感、表現が定まらなかったのでしょう。福井も私達も1回OKを出して、ミックスまで済んだ音源を持って鹿児島に帰ったまではいいのですが、数日して「スミマセン、、、もっといい歌が歌えると思うんです。」と連絡があり、日程を調整して再度上京してレコーディング。数日してさらに納得できないところを歌いなおしと、、、聴いてくれる人が福井の歌声から頭の中にそれぞれの町(街)を想いうかべてほしいとの思いを形にすべく、制作期間を大幅にオーバーして完成に至りました。

「ごめんね」のカップリング曲として、この作品が選ばれるまでには、本当に困難な選曲の過程がありました。「ごめんね」が、とても哀しくて切ない女性の心を表した作品であるだけに、いままで創り貯めてきた恋愛をテーマとした福井の作品の中から選曲すると、恋愛の質感や世界感が、お互いに薄れてしまわないかという危惧と、「深い哀しみを感じる曲を聴いた後で、すぐに切ない恋の歌を聴かされたのでは、精神的に辛くなる。」という意見が、関係者からも多く寄せられたからです。
福井の個人的な性格は、決して1枚目のCDに収めた2曲や、「ごめんね」の詞の世界のような暗くて切ない、可愛そうな女の子ではなく、素直で明るく、周囲に気配りの出来る優しいタイプです。その優しさや、穏やかさをそのまま表現した曲を合わせたときに、よりアーティスト「福井静」を音楽の世界の中から感じてもらえるのではないかということで、出来たばかりの「マチ」が、カップリングに決まりました。

ごめんねへ

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